2022年があけました。
「コロナ」という世界を大きく揺るがすウィルスは、2年が過ぎた今もなお、変異を繰り返しながら世界に猛威をふるっています。私自身もよくわからないままに、メディアから入る情報だけを頼りに自分なりに行動を判断するしかありません。とりあえずワクチンも接種しましたが、どこまで効果があるのかは自分では全くわかりません。
いろいろなことが制限されてきたこの2年間。その間に私は、いろいろなことを考えさせられてきました。
しかし、変異したのはウィルスだけではありません。人々の考え方、生き方(ライフスタイル)、価値観…。いろいろなものも確実に「変異」しているように感じます。それに合わせて私自身も「変異」したなぁと思います。
その「変異」をどう捉えるか。「変異」というと聞こえがあまりよくないですが、私はそれを「進化」と捉えてみようと思っています。
2021年、“庭花”のスタイルは大きく進化した1年でした。庭の手入れを中心に考えていた年間スケジュールを根本的に見直し、庭づくりを積極的に組み込んでいきました。庭づくりをするのならば、植栽は必要不可欠。その植栽環境への配慮に特に情熱を注ぎました。過去に手掛けてきたお庭でも、植物の成長が芳しくないところは、改めてメス入れをし、土中環境の改善を試みました。(この技術に関しては、今後少しずつお話していこうかと思います(Instagramでは度々投稿しております)。私は愛知県のJinen Gardenさんからその多く(基礎)を学ばせて頂きました。土中環境の改善の重要性については、千葉県の造園家である高田宏臣さんが有名ですが、その影響を受けた造園家が日本各地で活躍しており、Jinen Gardenの江川聡さんもその一人です。江川さんには本当に感謝です。)
土中環境の改善、いわゆる土の中に空気や水が行き来できるような道(空隙)をつくってあげるだけで、植物の根系の発達は格段に良くなることが実感できました。おそらく、常にフレッシュな空気や水が土中を行き来することで菌根菌や好気性バクテリアが健全に生育し、それにより植物の根の成長ホルモンが活発になるのだと思います。私の経験ですが、京都の森では比較的普通に見られるコバノミツバツツジやヤマツツジ、ソヨゴ、アオハダ、シャシャンポ、ナツハゼなどを庭に植えるとすぐに樹勢がくだることが多く、その理由もわからず困っていました。しかし、通気水脈の造作をほどこし土中環境を整えると、これらの木々も健全な生育状態を維持できる傾向にあることがわかってきました(まだ時間経過が浅いので、今後も注意深く経過観察をしていくことが必要ですが)。また、表層のマルチングも大きい効果を上げていると思いました。木々の根もとにバーク堆肥や落ち葉などを敷きつめ、森林内の表層と同じような仮想A0層をつくってあげることで、夏場の根の温度上昇を防ぐと同時に乾燥も防ぎ、菌根菌やバクテリアの発達、分解微生物や昆虫類の生息をも促します。そうやって高木が順調に健全に生育をしていけば、その足元の中低木や下草類もすくすくと育っていきます。同じ科の植物同士でしたら、菌根菌を共生することもありうるかと思います。土壌が豊かになれば、落ちた種子からの発芽も率よく育つことでしょう。
結局お庭もひとつの生態系であり、植えられている植物同士が密接に関係しあって生きています。そこにくる鳥や虫も、受粉や食餌をする生態系の一員として不可欠な存在です。そうやって生き物たちのいろんな関係性を意識し、お庭づくりを「自然環境づくり」として捉えれば、私ガーデナーとしてのお庭への向き合い方も大きく変わってきます。
2021年はそんなことを改めて実感した一年でした。
自然が好きでこの仕事に就いた。その原点を忘れずに。
原点回帰と進化発展、そして技術の深化。その間をいったりきたりしながら、今年も私は歩み続けたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
庭花 niwahana landscapes kyoto 代表:吉野ひろき
<2022/1/3 変化から進化へ。2022 謹賀新年>