循環と再生の庭

<京都市左京区 O様邸 / 2022>

閑静な住宅街の一角に、突如として現れた森。

柔らかな木々が風にそよぐたびに優しくこもれびを落とし、小鳥や虫たちのオアシスにもなっています。

まるで森の中に家があるような、緑に包まれた空間。飼われている2匹の犬たち(黒柴)も、このお庭をとても楽しんでくれているよう(笑)

緑いっぱいの庭をつくることは、一見環境に良いことしかないように思えますが…

つくる過程では、解体に伴う廃棄物の発生や重機等使用によるCO2排出など、環境への負荷の要素があることは否めません。

そんなアンチテーゼを私なりに解釈するため、「環境への負荷軽減」をコンセプトとしてつくらせて頂いたのがこのお庭。

このお庭には、環境負荷削減のための8つのこだわりを詰め込んでいます。

1.土中の空気と水の流れを考えた、通気浸透水脈の造作(土中環境の再生)

2.解体材(真砂土舗装材)を積んだコッツウォール風の石積み(廃棄物の再利用)

3.掘削時に出てきた川石を積んだ腰積みとベンチ(現場発生物の活用)

4.古材を使った石だたみ(既存石・京都市電の敷石・石臼などの再利用)

5.古材耐火レンガを使ったアンティークな物置小屋(古材の再利用)

6.解体時に発生したコンクリートガラを使ったバードバス(廃棄物の再利用)

7.地元京都産の桧材を用いたウッドフェンスとパーゴラ(地産地消によるCO2排出の削減)

8.これら「循環と再生」を象徴したストーン・サークル(サイクル)のエントランス

一貫したコンセプトを通すことで、お庭全体がひとつのストーリーとして繋がりました。

施工中から近所の方々から注目されたこともあり、完成後にはお披露目としてオープンガーデンを開催。

たくさんの方々に見て楽しんでいただきました。

本来プライベートであるはずの個人邸のお庭で、いろんな方がいろんな形で楽しめる、という価値観の広がりによってお庭の魅力も増したように思います。

コロナを機に閉鎖的になりつつあった“ご近所づきあい”が、新しい形で「再生」し、地域コミュニティが好「循環」した「循環と再生の庭」。心ひろいO様には、心より感謝です。ありがとうございます。